大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)6402号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕……によれば、被告は菓子販売の営業を目的として本件店舗を賃借し、ここで菓子の小売販売を営んでいたこと、本件店舗の所在は、西武線練馬駅前約一〇米の繁華街にあり、人の流れも相当あつて小売りには一等地であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

右の事実と本件賃貸借の締結にあたり被告から原告に礼金一、〇〇〇、〇〇〇円の外に敷金一、〇〇〇、〇〇〇円が別個に支払われたという当事者間に争いない事実によれば、本件賃貸借の礼金一、〇〇〇、〇〇〇円は、本件店舗が繁華街において有する場所的利益の対価として支払われたものと解すべきである。被告主張のような右礼金が本件店舗の賃借権譲渡承認の対価として支払われたことおよび右礼金が被告が岩沢大陸に賃借権を譲渡した対価として返還されたことを認めるに足りる証拠は全くない。

証人鶴岡道男の証言によれば、本件店舗附近の店舗の賃貸借において賃借人から賃貸人に礼金が支払われたときは、賃貸借が終了しても、賃貸人から賃借人にこれを返還する必要がないものと一般に取り扱われていることが認められるが、礼金という名目の金銭はすべて返還の義務なしと考えることは妥当でない。けだし、礼金が場所的利益の対価であるとしても、賃貸借期間に比して短期間で賃貸借が終了した場合、多額の礼金を総て賃貸人の取得すべきものとして返還義務を認めないことは、賃借人に著しく不利益を及ぼして公平に反する。返還義務の有無は、賃貸借期間の定めがあるかどうか、賃貸借終了までの期間、賃貸借終了の原因、礼金の額などから総合的に判断して公平の原則に照して決すべきものと考える。

本件においては、賃貸借期間は五年であるのに一年五カ月余りで合意解除により賃貸借が終了したこと、五カ年間の賃貸借の礼金が金一、〇〇〇、〇〇〇円という多額であり、しかもこれと同額の敷金が支払われていること、一カ月金二五、〇〇〇円という賃料は前認定のような場所にある店舗の賃料としては比較的低いものと認められるなどの諸事情を考慮すれば、契約所定の賃貸借期間の残存期間に対応する部分の礼金は返還義務があり、経過期間に対応する部分の礼金は返還義務がないものと解するのが相当である。そうすると、本件賃貸借は、期間昭和四二年一月二五日から昭和四七年一月二四日までの定めがあるところ、昭和四三年六月三〇日で終了したのであるから、経過期間に対応する礼金の額が金二八六、三三八円であることは計算上明らかであるから、原告は被告にこれを返還する義務がなかつた。(岩村弘雄)

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